研究分担者 |
村田 聡一郎 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (40436275)
近藤 匡 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (00375495)
池田 博 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 准教授 (50272167)
福永 潔 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (20361339)
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研究概要 |
本研究は生体材料を用いた新しい難治性肝疾患治療法の開発を行うことを目的とする.我々は生体材料として,血液中に豊富に存在し増殖因子や生理活性物質を豊富に含んでいる血小板に着目し、これまでヒト血小板がヒト肝星細胞やヒト肝類洞内皮細胞に与える影響を検討、ヒト血小板を用いた難治性肝疾患治療法の基礎的検討を行った.その結果,血小板は肝星細胞の活性化を直接的に阻害し,肝臓の線維化を抑制することを明らかにした.平成21年度は血小板の肝星細胞の抑制メカニズムの解析を行った.ヒト血小板と培養ヒト肝星細胞を共培養すると肝星細胞の活性化が有意に抑制され、血小板中に含まれる有力な増殖因子であるPDGF,VEGF,IGF-1の阻害剤を添加しても血小板の肝星細胞抑制効果は変化しなかった.一方血小板中に存在するATPの分解酵素apyraseを投与すると肝星細胞の抑制効果がさらに増強した.ATPおよびadenosineを投与すると肝星細胞の抑制効果が再現されたことから,血小板の肝星細胞抑制効果には血小板中のATPおよびadenosineが深く関与することが示唆された.また肝臓の類洞の内皮細胞に対して血小板がどのような刺激を与えるか検討してきた.その結果血小板は肝類洞内皮細胞からIL-6を分泌させることによって肝再生を促進していると考えられた.平成22年度は血小板の肝類洞内皮細胞の活性化メカニズムに関して詳細な検討を行った.ヒト血小板とヒト肝類洞内皮細胞を共培養すると肝類洞内皮細胞が活性化されIL-6が分泌されるが,その効果は血小板中のPDGF,VEGF,IGF-1の阻害剤を添加しても抑制されなかった.血小板中に含まれるリン脂質であるS1Pの阻害剤を添加すると肝類洞内皮細胞のIL-6分泌効果が有意に抑制された.肝類洞内皮細胞にS1Pを添加するとIL-6が分泌された。以上の結果から血小板による肝類洞内皮細胞活性化には血小板のS1Pが作用していることが示唆された.本研究の結果から難治性肝疾患に対して血小板は有効な治療法になる.
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