遺伝子の導入、細胞内での遺伝子の発現、細胞内での分子移動の制御、遺伝子導入細胞による生体の応答を利用した新たな難治性消化器癌に対する新たな治療を目指している。これまでの単に遺伝子を導入する、単独の分子標的を目的とした薬剤のみでは、ヘテロジェナイティーという特徴をもつ難治性の消化器癌の性質からみるとその治療には限界がある。当研究では、遺伝子を導入する時点から、ヒストンのアセチル化脱アセチル化、転写、翻訳され機能するタンパクとして発現し、細胞内を輸送され、さらに分解されるという細胞内でのダイナミックな動き、エピジェネティクスを制御することを目指している。 今回、食道癌細胞にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を作用させることによって生じるアポトーシスの機序について不明であったが、新規ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤CHAP31が食道癌治療に有用であることを示し、そのアポトーシスの機序がFas-FasLによる外因性経路ではなく、ミトコンドリアを介した内因性経路によるものであることを明らか化にした。この経路ではBaxが関与しているがその上流のp53とは独立しており、ROSが関与していることも明らかにした。 また、このCHAP31は新たながん治療として有用性が検証されつつある重粒子線との併用により、食道癌細胞においてCHAP31がDNA修復遺伝子の発現を抑制し、その抗腫瘍効果をin vitroならびにin vivoにおいて増強することを明らかにした。
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