研究概要 |
大腸がんにおけるゲノム全体の低メチル化が、癌患者の予後や抗癌剤の効果を予測するマーカーとなり得るかを検討した。根治術を施行した大腸がん患者139例を対象とした。ホルマリン固定パラフィン包埋検体よりDNAを抽出し、quantitative methylation specific PCRにてLINE-1のメチル化を定量した。全症例を対象とした場合、LINE-1のメチル化は予後と相関しなかったが、フッ化ピリミジン系経口抗癌剤による術後補助療法を受けていない手術単独治療群では、LINE-1 lowグループはLINE-1 highグループに比較して有意に予後良好であった。術後補助療法を受けた患者群ではLINE-1メチル化と予後の間に関連を認めなかった。一方、LINE-1メチル化によるサブグループ解析を行うと、LINE-1 lowグループでは術後補助療法を受けた患者群は手術単独治療群に比較して有意に予後良好であった。LINE-1 highグループでは術後補助療法による予後改善は認められなかった。以上の結果はLINE-1メチル化の測定により術後のフッ化ピリミジン系経口抗癌剤使用を個別化できる可能性を示唆し、臨床応用をめざしてさらなる検討を続ける価値があると考えられた。 プロモーター領域のDNAメチル化獲得機序にシチジンデアミナーゼ活性とG:Tミスマッチ修復機構が関与するのかを探索する目的で、大腸がん組織におけるAPOBEC(1, 2, 3A, 3B, 3C, 3D, 3F, 3G), AID, TDG, MBD4の発現とCpG island methylator phenotypeの関連を検討した。その結果、今回解析した遺伝子の発現はプロモーター領域のDNAメチル化には関連が少ないと考えられた。
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