LINE-1メチル化(meL-1)が5-FUの効果と相関するメカニズムを解析した。大腸がん細胞、臨床検体においてmeL-1の低下は6kbの完全長LINE-1 mRNAの発現性に相関していた。がん近傍の正常大腸粘膜にはLINE-1 mRNAの発現を認めなかった。5-FU処理により大腸がん細胞においてLINE-1 mRNAの発現増大を認め、同時にDNA損傷のマーカーであるリン酸化ヒストンH2A.Xの誘導が観察された。RNA干渉を用いてLINE-1の発現を抑制すると、5-FU処理によるリン酸化ヒストンH2A.Xの誘導も抑制された。以上の結果は、5-FUによるDNA損傷のメカニズムにLINE-1の発現が関与していることを示唆する。 laser capture microdissectionを用いて、組織からがん細胞と間質細胞を分離採取し、meL-1レベルを解析した。大腸がんの原発巣では腫瘍の中心部および先進部からがん細胞を採取した。また、リンパ節転移、遠隔転移巣からもがん細胞を採取した。原発巣では、検体採取部位によるmeL-1の相違は認められなかった。同一患者における原発巣、リンパ節転移、遠隔転移巣間のmeL-1レベルにも相違は認めなかった。以上の結果から、検体採取部位がmeL-1の測定値に与える影響は少なく、臨床診断の解析対象としmeL-1が適切であると証明された。 CpG island methylator phenotype (CIMP)の表現型を示す大腸がん細胞RKOにGamma-glutamyl hydrolase (GGH)を強制発現させ、DNAメチル化の変化と5-FUへの感受性変化を解析した。GGH発現によりDNAメチル化は低下し、5-FUへの感受性も低下した。以上の結果は、CIMPの表現型獲得に葉酸代謝が関与する可能性とCIMPが5-FU感受性マーカーとなる可能性を示唆させる。
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