研究概要 |
5-FUの効果増強戦略として、LINE-1の発現誘導を利用できるか検討した。LINE-1を誘導し得る薬剤として、脱メチル化剤(5デオキシアザシチジン、ゼブラリン)とヒストン脱アセチル化阻害剤(バルプロ酸)を使用した。各薬剤投与時のLINE-1発現をNorthern blottingで検討すると、LINE-1が高メチル化によりもともと発現していない細胞(HCT116, RKO)では脱メチル化剤でLINE-1の発現を認めたが、LINE-1が低メチル化により発現している細胞(SW480, Caco2)ではLINE-1の発現増強は認めなかった。ヒストン脱アセチル化阻害剤ではいずれの細胞でもLINE-1の発現変化は認めなかった。HCT116, RKOで脱メチル化剤と5-FUの併用効果を検討したところ、両者の併用により相乗的効果が認められた。以上の結果は、HNE-1を発現していない5-FU耐性大腸がんでは、脱メチル化剤を前投与しLINE-1の発現を誘導することにより、5-FU耐性を克服できる可能性を示唆する。 DNAメチル化のプロファイルとk-ras遺伝子変異の関連を約300例の臨床大腸がん症例で検討した。CACNAIG, IGF2, NEUROG1, RUNX3, SOCS1のうち3遺伝子以上にpromoterhypermethylaもionを認める症例をCpG island methylator phenotype(CIMP)とした。CIMP+症例では有意にkTas遺伝子変異が多かった。CIMP-症例では、k-ras遺伝子変異を認める症例でLINE-1のメチル化が高かった。以上の結果から、臨床大腸がんの分子生物学的分類においてk-ras, CIMP, LINE-1メチル化による分類が可能であり、各サブグループでの発がん経路を検討する必要があると考えられた。
|