研究概要 |
本研究は体系的な遺伝子・タンパク発現からみた大腸癌の発育進展、転移再発に関与する数種類のcandidate分子の同定と、特異的メタボライト解析から治療応答性に関与する分子を同定し、臨床応用化することを目的としている。 30000遺伝子を搭載したヒト全遺伝子型DNAチップを用いた遺伝子発現解析では、大腸癌患者の術後肝・肺転移に関与する遺伝子群の他、pStage II,pStage III別に再発に関与する約100種類の遺伝子群を同定し、mRNAの発現信頼性をTLDA法により検証した。さらにプロファイル解析で約80%の再発予測率を、別途200例の大腸癌症例で臨床型chipにより検証した。個別の再発の可能性が正しく判別できれば、術後補助療法の適正な施行おける臨床的意義は大きい。 NBS/MALDI-TOFMS法を用いたタンパク発現解析では、大腸癌の術後肝・肺再発において特異的発現する約50種類の蛋白を同定し、Western Blotting,IHCで発現validationが確認された約20種類のタンパクのうち、7種では血清中発現をELISA法での検出可能であった。 特異的メタボライト解析では、健常者の中からの大腸がんを発見する検診レベルでの血清screeningに有用なバイオマーカーとして同定した6種類のメタボライトがビタミンDの代謝物であることが確認された。さらに大腸がん患者に対する5FU base+CPT-11,0HPなど薬剤感受性・耐性獲得に関与するバイオマーカー、直腸がん患者に対する放射線感受性性に関与するバイオマーカーについて探索している。今後、一定のsubpopulationを個別予測できる診断システムを構築し、現在prospectiveに集積している症例を用いて十分検証する。
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