研究課題/領域番号 |
20390360
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井上 裕 九州大学, 生体防御医学研究所, 共同研究員 (90203249)
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研究分担者 |
三森 功士 九州大学, 生体防御医学研究所, 助教 (50322748)
田中 文明 九州大学, 大学病院, 助教 (30332836)
石井 秀始 九州大学, 生体防御医学研究所, 学術研究員 (10280736)
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キーワード | 多様性 / 消化器癌 / マイクロアレイ / LMD / 癌幹細胞 / EMT / 癌間質 |
研究概要 |
本研究の最終目的は癌の多様性(heterogeneity)をもたらす遺伝子群とこれを調節する遺伝子群とを明らかにして、それがどの様な連鎖(過程)を介して連携するか所謂pathwayを明らかにすることにある。 まず第一に特に癌幹細胞については、細胞の多様性の起源となる細胞であり、造腫瘍能はもちろんのこと治療抵坑性あるいは転移再発とも関連することが報告されつつある(Ishii et al. Cancer Sci2008)。従って、われわれは固形癌における幹細胞様性質を有する細胞マーカーの検索を行い、大腸癌においてはCD133^+CD44^+分画のみが造腫瘍能を有する分画であることを明らかにした(Haraguchi et al. Ann Surg Oncol2008)。肝臓癌ではGO期にあるpyroninY染色により細胞集団を同定分離した(Kamohara et al. Surgery2008)。 次に癌細胞が多様性を示し治療抵抗性を示す上で上皮一間葉移行(epithelial mesenchymal transition;EMT)が重要な性質と考えられている。EMTを誘導する蛋白としてTGFbetaが知られるが、そのfamilyのひとつとしてActivinについて注目し食道癌の悪性度を規定する因子として重要であることを示した(Yoshinaga Ann Surg Oncol2008),逆にMETをきたす因子としてBMP7が知られるが、大腸癌におけるBMP7の発現意義を明らかにした(Motoyama K. Ann Surg Oncol2008)。また、ごく最近われわれは大腸癌細胞特異的に発現する某遺伝子を同定し、その形質導入によりEMTを誘導し、内因性に発現する株のKDによりMETを来すことを明らかにした。同遺伝子は免疫染色により直腸癌のtumor buddingに一致して描出されることも示した。さらに同遺伝子導入株はCD133発現細胞のみ造腫瘍能を有することから、「癌幹細胞様の性質を有するEMT誘導遺伝子」として現在論文投稿中である。 この他にも癌の多様性を示す原因として宿主側の因子(すなわち間質の反応)にも着目している。大腸癌癌細胞に隣接する間質細胞および癌細胞をそれぞれLMD法を用いて採取し、それぞれRNAを抽出しマイクロアレイを行った,その結果、癌間質特異的に発現する遺伝子群の変異率は、健常組織間質に比べて高く、間質における反応の違いも癌の多様性を決定する上で重要であることを示した(論文投稿中)。
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