研究概要 |
【1】 癌幹細胞からのアプローチ 癌幹細胞における治療抵抗性、難治性機構の解明のために、まず正常幹細胞の培養を試みた。Ootaniらはマウス腸管培養を行い、Lgr5+マウス腸管幹細胞は筋線維細胞などのnicheが存在しなくてもin vitroで増殖可能であることを明らかとした(Ootani A,Nature 459,262,2009)。われわれはこの実験手技を踏襲し、マウス大腸粘膜の培養に成功し実験の再現性を得た。また、ヒト組織については、小腸粘膜の再生に成功した。さらに現在ヒト大腸粘膜における大腸幹細胞が同様の培養システムで培養可能なのかについて着手し、発癌付加を加え抗癌剤の耐性実験を行う。 【2】 EMTからのアプローチ 癌細胞の転移能獲得には上皮細胞が間葉系移行する機構(EMT)が重要であるといわれている。また、EMTを来した癌細胞は幹細胞様性質を有することが報告されており、その臨床的意義が注目されている。ごく最近われわれは、EMTを誘導する分子(iEMT)を同定した。治療標的分子としての意義を明らかにするために、iEMT抑制作用により、METへの回帰とEMTによる抗癌剤耐性を示した大腸癌株化細胞の治療感受性の回復を確認し、治療標的分子としての意義を確認した。 【3】 宿主側因子からのアプローチ 癌進展における癌間質関連因子が注目されている。本研究では癌間質細胞特異的に癌進展において重要な役割を担う遺伝子を包括的解析を用いて明らかにする。特にmicroRNAの注目して解析を行った結果、癌間質において特異的に発現するmicroRNAを同定した。今年度のpreliminaryな解析の結果、癌細胞と同等のmiR発現変異を認め、癌細胞とほぼ同等の変異を来すことが明らかとなった。
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