研究概要 |
難治性虚血性疾患に対する自己骨髄細胞移植による血管再生療法は世界中で臨床応用が施行され、有用性と安全性が示されている。一方で、一部の患者では本治療による明らかな改善が得られず、このような反応性(治療効果)の違いは、患者背景による骨髄細胞の質の違いが一因と考えられる。そこで、本研究では、自己骨髄細胞移植による血管再生療法の治療効果を総合的に予測するシステムの構築と確立を目指す。本年度は、高価な特殊検査を必要とせず、市中病院でも利用可能な簡易予測システムを構築することを目的とした。本研究の同意を得て、胸骨正中切開を必要とする成人患者(25例)から骨髄単核球細胞を単離し、SCIDマウスの虚血下肢筋肉内へ移植後に測定した血流量の増加率を各患者の骨髄細胞の血管再生効果とした。また、こうした各患者の骨髄細胞の血管再生効果に影響を及ぼす因子について、患者の一般背景(年齢や全身併発疾患など)や一般的な臨床検査データ(Hb,CRPなど)から多変量解析によって抽出し、Risk ratioに応じてスコアを振り分けた。その結果、各患者の総合スコアと骨髄細胞の血管再生効果(SCIDマウスの虚血下肢の血流量)には、強い相関が認められた(r=-0.883,P<0.001)。以上のように、本研究では骨髄細胞での血管再生効果の低下に関するリスクファクターを同定でき、それらのリスクファクターに基づく細胞移植療法の治療効果を予測するシステムの構築に至った。治療効果の予測システムの構築は細胞移植による血管再生療法の適応患者の選択に有用であり、意義深いものと考えられる。
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