・胸部悪性腫瘍またはその疑いで当科を受診し病理診断が確定した342例を対象に、末梢血液中に存在する循環腫瘍細胞(CTC)および循環内皮細胞(CEC)を"CellSearch"システムにより分離定量し、原発性肺癌におけるバイオマーカーとしての臨床的意義を検討した。 ・その結果、原発性肺癌では31%の症例にCTCが検出(0-62個/7.5mL)されたが非悪性疾患ではCTC陽性率は12%(0-2個/7.5mL)であり、原発性肺癌ではCTC個数が有意に多かった(P=0.049)。しかしながらROC解析では、CTCは肺癌と非悪性疾患の鑑別に関して有意な診断能を示すことができなかった(AUC=0.598[95%CI:0.488-0.708];P=0.122)。一方、肺癌症例の中で遠隔転移を有する症例でのCTC陽性率は非転移例と比べて有意に高く、ROC解析でもCTCは遠隔転移診断についての有意なバイオマーカーであることが示された(AU=0.783[0.679-0.886];P<0.001)。また、組織型別の比較では、CTC個数は小細胞肺癌において非小細胞肺癌よりも有意に高値であった(P<0.001)。 ・CECについては、原発性肺癌および非悪性疾患でのCEC平均値はそれぞれ97.5個/4mLおよび52.5個/4mLであり原発性肺癌において有意にCECが高いことが示された(P=0.023)。また、ROC解析によってもCECは肺癌と非悪性疾患を鑑別するための有意なバイオマーカーであること、更にその至適カットオフ値は50個/4mLであることが示された。また臨床病期別のCEC平均値(/4mL)は、I/II/III/IV期がそれぞれ58.7個/57.9個/83.4個/178.4個であり、遠隔転移を有するIV期症例においてCEC個数が有意に高いことが示された。
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