研究課題
肺腺癌の約60%はEGFR経路(EGFR、KRAS、HER2、BRAFなど)に遺伝子異常を有しており、これらの遺伝子異常の研究は、肺発癌過程の探索という基礎分野のみならず、ゲフィチニブなどの分子標的治療薬に対する治療効果予測を可能とした。一方EGFR経路以外の異常として、2007年にEML4-ALK融合遺伝子によるALK活性化(~5%)が報告された。これらのEGFR経路内外の遺伝子異常は互いに排他的であるが、肺腺癌の約30%にはこのようなOncogenicな遺伝子異常がみつかっていない。そこで我々は、肺癌細胞株および臨床検体を用いて新たな分子病因の探索をおこなってきた。昨年度のMET遺伝子増幅(1.4%)、MET遺伝子変異(3.3%)、PTPN11遺伝子変異(0/241)、ROS融合遺伝子(0/92)の解析に加え、本年度はMEK1遺伝子変異、HER4遺伝子変異を解析、それぞれ92例、98例を検討したが変異は同定できなかった。HER4に関しては、遺伝子発現と臨床病理学的因子・予後との関連も検討したが有意な関連は認めなかった。またHER2遺伝子変異については502例の大規模解析をおこない、13例に変異を同定、その詳細な臨床病理学的因子や予後について、現在検討中である。一方、上述のMET遺伝子増幅は肺腺癌のEGFR標的治療の耐性メカニズムとしても報告されており、標的治療に対する耐性メカニズムを解析することは、治療耐性の克服につながるのみならず、肺腺癌のEGFR経路外の遺伝子異常を同定する契機にもなり得ると考えられる。このため、EGFR標的治療に感受性のある複数の肺腺癌細胞株を用いて、エルロチニブや不可逆的EGFR阻害剤に対する耐性株を作成、その耐性メカニズムを検討中である。
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Clin Cancer Res 15
ページ: 4493-4498
J Thorac Oncol 4 : 1415-9, 2009 4
ページ: 1415-1419
J Thorac Oncol 4
ページ: 1-4