研究概要 |
当科におけるGlioblastoma62症例の腫瘍組織よりDNAを摘出し、Methylation specific PCR法でMGMT遺伝子のpromoter領域のメチル化を検討すると、メチル化の有無が無再発生存期間に有意に相関していることが明らかになった。予後不良群の治療法としてMGMTを枯渇させる治療が有効である可能性があるが、TemozolomideとACNUの全身併用投与法は毒性が強く臨床での導入は困難である。そこでACNUをConvection enhanced Delivery法により脳内局所投与を行い、Temozolomideを全身投与することでMGMTの枯渇療法を試みた。臨床例の蓄積は現在7例であるが、現時点では全例で安全な投与が可能であった。一方、ACNU投与後MRIを経時的にモニタリングすると、一過性に薬剤が拡散した部位に一致し造影剤が漏出する現象が認められた。このことはACNUの投与に伴いMGMTの枯渇の効果の他に血液・脳関門の薬剤透過性が一過性に亢進される可能性が示唆された。この事実をふまえ、ラット脳内にACNUを投与し、その後、エバンスブルーを投与することにより、血液・脳関門の薬剤透過性を確認した。結果、血液・脳関門の薬剤透過性はACNU投与後一過性に亢進することが明らかになった。そこでラット脳内に9L(悪性神経膠腫培養細胞)を移植し、その後ACNU-CEDを行った。さらに血液・脳関門の薬剤透過性が亢進している時期に抗腫瘍薬DOXILを投与し生存期間・毒性を検討した。結果としてDOXIL,ACNU-CED併用療法はそれぞれの単剤投与に比較し生存期間が有意に延長することが明らかになった。
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