まず、脳に対するカプセル移植そのものの影響を差し引いて評価して、カプセル化細胞移植の真の治療効果を検討するために、カプセル化骨髄幹細胞移植群、空カプセル移植群、空カプセル移植+非カプセル化量髄幹細胞移植群という3群間の比較をげっ歯類脳梗塞モデルに対して行った。一過性中大脳動脈閉塞モテルラットにおいて、空カプセル移植群で脳梗塞体積は最大であり、カプセル化細胞移植群と空カプセル移植+非カプセル化細胞移植群においては脳梗塞体積が有意に減少した。また、行動学的にも同様であり、2つの治療群は、空カプセル移植群に比して有意な改善を示した。興味深いことに、カプセル化細胞移植群と空カプセル移植+非カプセル化細胞移植群においてはほとんど治療効果に差が得られなかった。この事実は、カプセル化細胞移植においては、移植細胞と宿主細胞の神経回路再構築がありえないにも関わらず、非カプセル化細胞移植群と同等の治療効果を有したことを示しており、その機序として、移植細胞から分泌される神経栄養因子の関与が示唆された。続いて、カプセル化骨髄幹細胞とカプセル化神経幹細胞の神経栄養因子や成長因子の分泌能に関して、それぞれカプセルに封入していない状態と比較した。In vitroにおいて、カプセル化から1週間の時点では、カプセル前・非カプセル化培養細胞と比較して有意差は無いものの種々の分泌能が低下していたが、4週間後には有意差をもって、カプセル化細胞の方が高い分泌能を示した。このことは特に骨髄幹細胞から分泌される血管内皮成長因子において顕著であった。さらにカプセル化細胞移植後4週間後の脳からもこの因子は有意に多量に存在していることが確認できた。霊長類研究については、現在までのところ一過性中大脳動脈モデル作成を施行したにとどまっており、これを発展させられるように来年度は研究を進めたい。
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