脳梗塞への細胞移植療法においては、移植される方法が直接移植であれ、カプセル化された状態での移植であれ、移植される細胞の生存に好都合な環境を作る必要がある。カプセル移植においては、カプセル内の細胞は高分子半透膜を介して酸素や栄養分を取り込むことができ、免疫担当細胞や抗体の侵入はブロックされるため、移植される細胞の生存には好都合とされるが、更なる生存率の向上をもたらすために可能なことはないかと考え、GDNFを事前に投与した神経幹細胞にOGD負荷をかけ、in vitroで評価を行った。コントロール群と比較して、GDNF pre-treatment群では生存細胞数の増加ならびにアポトーシスの減少を認めた。また、この幹細胞を病態モデルに移植した際も、コントロール群に比較して多くの細胞が生存しており、栄養因子によるpre-treatmentは幹細胞を直接移植する際のみだけでなく、カプセル化状態で移植する際にも応用可能ではないかと考えた。霊長類を用いた脳梗塞モデルについては、開頭クリッピング術にて中大脳動脈を閉塞させ梗塞巣を作るのが一般的である。しかし、開頭術のため、侵襲が高い。そのため、今年度は、脳血管内治療の手技に基づいた、できる限り低侵襲な一過性中大脳動脈閉塞モデルを開発することを目標とした。全身麻酔の上、レントゲン透視下に血管撮影を行いながら、カテーテルをBovine archに留置した。そこからバルーン付きマイクロワイヤーを中大脳動脈のM1部に送り込もうとしたが、血管の蛇行が強く不可能だった。そのため、内頸動脈終末部にてバルーンを拡張させ、前・中大脳動脈へ流れる血流を一過性に遮断した。再灌流後、麻酔から覚醒したサルは、片麻痺を発症しており、脳組織においては、尾状核頭を中心に脳梗塞巣を確認することができた。血管内手技による脳梗塞モデルは、より低侵襲ということで、今後の治療効果検討にあたり、より適切なモデルと考えられた。
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