研究課題
本研究者はこれまでに化学療法剤temozolomide(TMZ)の悪性グリオーマ細胞に対する作用がG2期DNAチェックポイントと密接に関わる機構であることを報告してきた。培養ヒトグリオーマ細胞を用いた実験系において、G2チェックポイント機構の下流の主要蛋白であるcdk 1をcyclin-dependent kinase(cdk)阻害剤flavopiridol(FP)で阻害したときのTMZ増強作用を検討し、FPがTMZの効果を増強し、またTMZ耐性株群のTMZ再感受性化をも示すことを解明した。ウエスタンブロット、EACSによる細胞死関連タンパクの変動や細胞周期分布を検討したところ、FPがTMZによるG2細胞周期停止作用を増強(G2-M移行を強く抑制)すると同時にDNA二重鎖断裂を増加させることが証明された。この効果はFP以外のcdk阻害剤でも再現されたため、G2-M移行期におけるDNA修復がTMZ感受性と密接に関係することが示された。またsiRNAによるcdk1抑制実験や動物実験系での確認も行った。以上と並行してストレス応答性タンパクとTMZ感受性との関係についても検討を行った。その一つであるc-jun N-terminal kinase(JNK)の細胞生存促進機構への関与を研究し、JNK阻害がTMZの抗グリオーマ作用を増強することを解明した。一方、分子シャペロンの一種である90 kD heat shock proteinの阻害剤(17-AAGなど)がDNA架橋形成型化学療法剤に対するグリオーマ細胞の感受性を増強することを解明した。この効果はTMZによる抗グリオーマ作用に関しては認められなかった。以上より、化学療法剤に対する腫瘍細胞の反応の更なる解析によって化学療法増感法の開発が可能となることが示され、標的治療と化学療法との併用が有効な新規療法開発につながる可能性が示された。
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