研究概要 |
1)滑膜肉腫・骨肉腫の第1相臨床試験 平成22年度は,滑膜肉腫患者の新規2症例に対してSYT-SSX改変ペプチドK9I+モンタナイド+インターフェロンαの投与を行った.重篤な有害事象はなかった.1例は6クール終了段階でRECIST SDであった.もう1例はRECIST PDのため投与中止となった.また以前からの継続投与の2症例はともにAWDであるが,ワクチン開始から3年11か月,1年6ヶ月間生存中である.骨肉腫では新規症例はなかった 2)骨軟部肉腫幹細胞の免疫学的特性の解析 昨年度までにside population法によって分離した悪性線維性組織球腫の幹細胞MFH2003-SPの免疫学的特性を解析した.MFH2003-SPは、main populationに比べHLA-class I、HLA-A24、B、C分子を細胞表面に高発現していた。 3)骨軟部肉腫幹細胞に対する自己細胞傷害性Tリンパ球(CTL)クローンの樹立 MFH2003-SPのドナー患者の末梢血単核球からCD8陽性細胞を分離し、MFH2003-SP細胞による刺激を行った後、限界希釈法によるクローニングを行った。樹立したCTLクローンTc4C-6は、MFH2003SP細胞に対する特異的な細胞障害活性を示し、HLA-class I抗体によりSP細胞に対する細胞障害活性がブロックされた。 〈意義・重要性〉ペプチドワクチン療法は滑膜肉腫に対して,安全性と有用性がほぼ確認された.肉腫にも幹細胞が存在し,幹細胞を認識するCTLが腫瘍周囲の微小環境と循環する末梢血に存在することが示された。肉腫幹細胞に対するCTL免疫療法は、肉腫を元から絶つ治療法になる可能性がある。
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