研究概要 |
1.滑膜肉腫に対するSYT-SSXペプチドワクチン療法の第1相臨床試験 登録症例数が予定の21例に達し,試験を終了した。有害事象として,発熱が14例,脳出血が1例(2009年度に報告済み)に認められた。ペプチド特異的CTLの誘導は7例(33%)に認められた。抗腫瘍効果に関しては,7例(33%)がSD,14例(67%)がPDであった。1例で48%の腫瘍縮小が認められ,2例で4年以上の長期生存が得られた。 2.骨肉腫に対するPBFペプチドワクチン療法の第1相臨床試験 本年度はA24.2ペプチド投与例4例,A2.2ペプチド投与例1例が登録された。有害事象として発熱が1例に,白血球減少が1例に認められた。抗腫瘍効果はSDが1例,PDが4例であった。 3.骨肉腫抗原ペプチド/HLA-class I分子複合体を認識する人工抗体の作製 抗原ペプチドとHLA-class I分子の複合体を特異的に認識する人工抗体をヒト型scFvファージディスプレイライブラリを用いてクローニングした。1クローンで抗原提示細胞表面上のペプチドとHLA class I分子の複合体をFACSで検出できた。人工抗体によるペプチドワクチン症例の選択が可能性になる。 4.新規肉腫幹細胞株の樹立と免疫学的特性の解明 類上皮肉腫細胞株ESXからALDEFUOR解析を用い,肉腫幹細胞を単離した。cDNA microarrayによる遺伝子発現プロファイリングを行い、癌幹細胞集団が膜タンパクCD109を高率に発現していることを見出した。 5.骨軟部肉腫の新規転座融合遺伝子の同定 類上皮肉腫細胞株ESXから、SOLiD^<TM>Systemを用いてmate pairライブラリのペアーエンド解析による構造異常を検出した。ESXの遺伝子再構成は8%と高頻度に起こっており、融合遺伝子の候補となる遺伝子ペアを50ペア同定した。今後RT-PCR,FISHにより融合遺伝子の存在を確認する。
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