研究概要 |
低酸素環境ストレス下に骨形成因子-7(以下BMP-7)の刺激を加え軟骨基質代謝の促進効果を検討した. 牛の中手指節間関節から単離した軟骨細胞をアルギネートビーズで三次元培養した.マルチガスインキュベーター(三洋電機機器・MCO-18M)を用いて,3種類の酸素条件(2%,5%,および21%)下に,ヒトリコンビナントBMP-7(以下rhBMP-7)(0,10,50,100,200ng/ml)で3-14日間刺激し,軟骨基質におけるプロテオグリカン(以下PG)の合成能および含量とコラーゲンの合性能を検討した.対照には21%の酸素条件(定常酸素条件)下,rhBMP-7で刺激しない軟骨細胞を用いた.2%および5%の低酸素環境ストレスでPGおよびColの合性能は有意に亢進した.PGおよびColの合性能は,2%の酸素条件に比べ5%の低酸素条件で有意に亢進した.また,rhBMP-7で刺激したところrhBMP-7の濃度依存性にPGおよびColの合成能は亢進した.PGの含量は,時間およびrhBMP-7の濃度依存性に亢進した. これらの結果から,一定の低酸素環境ストレスが軟骨基質代謝を亢進させること,および低酸素環境とBMP-7の刺激により,軟骨基質代謝亢進作用が増強する可能性が示唆された. 以上の研究結果は,免疫原性が少なく臨床応用の可能性が高いBMP-7を関節軟骨の代謝促進,軟骨再生に利用できる可能性があることを示しており,変形性関節症の治療を考える上で重要である.
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