本年度は、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子のノックアウトマウス(KO)と正常野生型マウス(Wild)を用いて実験を行った。8週齢の雄性マウスを用いた。各マウスに対して通常の水を与える群(水)と5%アルコール水を与える群(アルコール)の2群を作成し、合計4群で比較した。最長4週飼育した。脛骨の骨幹端部二次海綿骨における組織形態計測の結果、KO-アルコール群の海綿骨量(BV/TV)は、KO-水群あるいはWild-水群と比較して有意に減少していた。KO-アルコール群の骨石灰化面(MS/BS)と骨形成率(BFR/BS)は、他の3群と比較して有意に低下していた。骨代謝回転の指標である活性化頻度(Ac. f)は、KO-アルコール群で低下していた。破骨細胞(TRACP陽性多核細胞)数は各群間で差はなかった。骨代謝マーカーについて、血清オステオカルシン濃度はKO-アルコール群で有意に低下しており、尿中デオキシピリジノリン濃度は各群間で差はなかった。大腿骨及び脛骨から採取した骨髄細胞を用いたRT-PCRの結果、骨芽細胞分化に関連するI型コラーゲン、オステリックス、オステオポンチン、オステオカルシンのmRNA発現はKO-アルコール群で有意に低下していた。これらの結果から、アルコール摂取による骨量減少は、骨芽細胞の分化障害により骨石灰化が障害され骨形成率が低下することにより生じていることが明らかとなった。アルコール摂取は未分化骨芽細胞の指標であるI型コラーゲン発現から障害していたことから、骨芽細胞のアポトーシスや細胞周期停止との関連に着目して、骨芽細胞の分化障害のメカニズムを中心としたシグナルネットワークの解析実験を現在遂行中である。
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