アルコール摂取が骨・骨髄機能連関に与える影響を明らかにする目的で、水あるいはアルコールを摂取させたアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子ノックアウトマウス(KO)と正常野生型マウス(Wild)を用いて実験を行った。KO-水群、KO-アルコール群、Wild-水群、Wild-アルコール群の4群で比較した。8週齢の雄性マウスを用いた。脛骨の骨幹端部二次海綿骨における組織形態計測の結果、KO-アルコール群の海綿骨量(BV/TV)は、KO-水群あるいはWild-水群と比較して有意に減少していた。KO-アルコール群の骨石灰化面(MS/BS)と骨形成率(BFR/BS)は、他の3群と比較して有意に低下していた。大腿骨及び脛骨から採取した骨髄細胞を用いて定量的RT-PCRによりmRNA発現を評価した。その結果、KO-アルコール群において、骨芽細胞分化に関連するI型コラーゲン、オステリックス、オステオポンチン、オステオカルシンのmRNA発現は有意に低下し、細胞周期停止に関連するp21のmRNA発現は有意に亢進していた。アポトーシスに関連するp53のmRNAには変化がなかった。骨髄細胞を細胞培養し、mineralized noduleの形成により骨髄細胞における石灰化能を評価した。KO-アルコール群は石灰化能が低下していた。細胞培養液にp21 kinase specific inhibitorを添加することにより、石灰化能とオステオカルシンの発現は、Wild-水群と同程度まで回復した。これらの結果から、アルコール摂取による骨量減少は、骨髄細胞におけるp21遺伝子の発現亢進による骨芽細胞の分化障害により骨石灰化が障害され骨形成率が低下することにより生じていることが明らかとなった。
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