アルコール及び脂肪摂取が骨代謝に与える影響を組織から分子のレベルで明らかにし、骨の障害に対する防止法を開発することを目的に研究を行っている。昨年までの研究で、アルコール負荷が骨髄細胞におけるp21遺伝子発現を増加し骨芽細胞の細胞周期を停止することにより骨芽細胞分化を障害することが明らかとなった。本年度は、アルデヒド脱水素酵素遺伝子欠損マウス及びその卵巣を摘出した(エストロゲン欠乏状態で脂質代謝障害がある)マウスを用いて実験を行った。その結果、卵巣摘出により脛骨二次海綿骨における骨代謝回転は亢進したが、アルコール負荷により骨形成と骨吸収はともに低下した。卵巣摘出による骨量減少はアルコール負荷によりさらに低下した。卵巣摘出したアルデヒド脱水素酵素遺伝子欠損マウスにアルコールを負荷すると、骨髄細胞におけるp21 mRNAの発現が増加した。卵巣摘出したアルデヒド脱水素酵素遺伝子欠損マウスは、アルコール負荷の有無に関係なく、海綿骨よりも皮質骨の構造と強度に強い影響を与えた。具体的には、pQCTの結果から、野生型マウスと比べて、脛骨中央での皮質骨面積と皮質骨横径が有意に小さかった。そこから算出される力学強度は有意に低下した。以上の結果から、エストロゲン欠乏状態のアルデヒド脱水素酵素遺伝子欠損マウスは、アルコール負荷に依存することなく、皮質骨の構造が劣化し強度が低下することがわかった。今後は、皮質骨外面における骨形成(骨膜性骨形成率)に関連する遺伝子(wnt/β-cateninシグナル、スクレロスチン、ペリオスチンなど)の発現を調べ、アルコール負荷や脂質代謝との関連を明らかにする予定である。
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