アルコール及び脂肪摂取が骨代謝に与える影響を組織から分子のレベルで明らかにし、骨の障害に対する防止法を開発することを目的に研究を行っている。本年度は、アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)遺伝子欠損マウスを用いて実験を行った。ALDH2はアルコールの代謝によって生じるアセトアルデヒドを酢酸に分解する主な代謝酵素である。日本人の約40%がALDH2欠損型とされ、骨粗鬆症との関連性が指摘されている。今年度は、アルコール非投与下でのALDH2欠損マウスにおける骨構造の解析を行った。4、8、12週齢、雄性のALDH2欠損マウスおよび対照群としてC57BL/6Jマウスを使用した。大腿骨を摘出し大腿骨長、pQCTおよび骨幹部皮質骨の骨形態計測を行った。さらに両群の8週齢において両大腿骨、脛骨の皮質骨のmRNA発現を定量的RT-PCRで評価した。その結果、4、8、12週齢いずれにおいても、体重、大腿骨長は両群間で有意差を認めなかった。大腿骨のpQCTの結果、ALDH2欠損マウスは遠位骨幹端部海綿骨の骨密度は12週齢で有意差を認めなかったが、骨幹部皮質骨の骨密度は8、12週齢において有意に高値を示した。骨断面積は有意に低下していたが、骨断面積に占める皮質骨面積の割合は高値を示した。骨幹部皮質骨の骨形態計測では、ALDH2欠損マウスは8週齢で骨外膜面、内膜面ともに石灰化速度(MAR)、骨形成速度(BFR/BS)が有意に高値を示した。8週齢での硬組織のmRNA解析においてもBMP2、Runx2、osterixなどの骨形成のシグナル発現が有意に増加していた。ALDH2遺伝子欠損マウスでは、海綿骨の骨密度に変化はないが、骨形成のシグナル亢進により大腿骨骨幹部皮質骨の骨密度が増加していることが明らかとなった。
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