本研究の目的は、生きているマウスの中で、乳癌骨転移巣における血管新生とTGF-β/BMPシグナル伝達を同時に可視化し、それを定量する新しいテクノロジーを開発し、乳癌骨転移巣の血管新生におけるTGF-β/BMPシグナルの係わりを明らかにすることである。さらに、骨血管新生阻害剤やTGF-β/BMPシグナル阻害剤の乳癌骨転移における効果をインビボで解析し、その分子メカニズムを明らかにし、新たな癌骨転移治療法開発のための基礎的知見を得る。まず、乳癌骨転移巣における新生血管の可視化とその定量化を試みた。具体的には、近赤外蛍光イメージングの特性を活かして、骨転移モデルの新生血管を可視化した。申請者が樹立したヒト乳癌細胞株MDA-MB-231細胞の亜株で骨に高率に転移するMDA-231-D細胞を用いて、骨転移巣の血管新生を可視化することができた。撮影条件を検討することで鮮明な画像を得るとともに、さらにZスタック撮影によって三次元画像を得、イメージング画像を定量化することに成功した。次に、TGF-β/BMPシグナルを蛍光で可視化するトランスジェニックマウスの作製に取り組んだ。インビボでTGF-βまたはBMPのシグナルを可視化するトランスジェニックマウスを作製するために、TGF-β応答性プロモーターである9xCAGA配列の後方に赤色蛍光蛋白(red fluorescent protein:RFP)を繋いだプロモーターレポーター遺伝子のベクターとBMP応答性プロモーターであるBRE配列の後方にRFPを繋いだプロモーターレポーター遺伝子のベクターを作製した。さらに、ベクターを培養細胞にトランスフェクションし、TGF-β/BMP添加によって細胞が蛍光を発するか否かをin vitroで確認した。
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