骨系統疾患の原因遺伝子の同定とその変異の解析、及びそれに基づく骨系統疾患の分子病態の解析、遺伝子レベルでの診断法の開発、遺伝子診断システムの構築を目的として研究を行ない、以下の成果を得た。 1.先に我々は重症脊椎異形成症グループに属する骨系統疾患である蝸牛様骨盤異形成症(Schneckenbecken dysplasia:SBD)の原因遺伝子SLC35D1を同定した。今年度は新たなSBD症例、およびSBDと類似する他の重症脊椎異形成症グルーグ疾患の症例DNAを収集し、SLC35D1の遺伝子変異を調べた。その結果、SBD症例のみに変異が同定され、他の疾患症例では同定されなかった。従ってSLC35D1遺伝子の変異はSBDに特異的であることが強く示唆された。これまで同定されたSLC35D1の変異はすべて早期終止コドンをもたらす変異であったが、今回初めてのミスセンス変異を同定し、機能解析によりこのミスセンス変異も機能消失型変異であることを明らかにした。 2.重症脊椎異形成症グループに属する軟骨無発生症1A型(Achondrogenesis type IA:ACG1A)の責任遺伝子GMAP-210を世界に先駆けて同定した。ACG1A症例、GMAP-210変異マウスの軟骨細胞ではゴルジ体の異常な拡張、ゴルジ体におけるタンパク質の分泌阻害が観察された。従ってGMAP-210は軟骨細胞におけるゴルジ体の機能に必須であり、GAMP-210の機能欠損は致死的な骨格形成異常をもたらすことが示された。
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