申請者らは、軟骨分化制御を司る新しい遺伝子カテゴリーとして、ノンコーディングRNAに注目、軟骨組織特異的な発現を示すものをスクリーニングしてきた。ノンコーディングRNAの中でも、18~25塩基の非翻訳RNAであるmicroRNA(miRNA)は、現在400種類以上あると言われている。miRNAは、部分的に相補性を持つ標的mRNAの3'非翻訳領域に結合して翻訳抑制に働くと考えられている。我々は特に、miRNAに対するマイクロアレイによって組織特異的に発現するmiRNAを絞り込み、従来困難であったmiRNAに対するホールマウントin situハイブリダイゼーション法を可能にすることで、miR140が軟骨特異的に発現することを見出した。さらに、この発現パターンが転写因子Sox9と一致することに注目、Sox9のコンディショナルノックアウトマウスにおいてはmiR140の発現が見られないことを証明し、miR140がSox9の下流遺伝子である可能性を見出した。 miR140ノックアウトマウスの膝蓋靭帯、前十字靭帯、内外側々副靭帯を切離し、膝不安定性による変形性関節症モデルマウスの作製を行い、関節軟骨組織を解析したところ、miR140ノックアウトマウスでは関節炎の進行がコントロールに比べて、より強いことがわかった。さらにmiR140により軟骨保護作用を検討するため、ノックアウトマウスに加えて、軟骨組織特異的なmiR140トランスジェニックマウスについても抗原誘導による関節症モデル実験をおこなったところ、miR140ノックアウトマウスでは関節炎がより強く発症するが、miR140トランスジェニックマウスでは関節炎が抑制されていることが明らかとなった。これらの研究をもとに、今後miR140による制御機構を明らかにすることで治療法開発における新たなツール、ターゲットを創出する可能性を探る。
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