申請者らは、軟骨分化制御を司る新しい遺伝子カテゴリーとして、microRNA(miRNA)に注目、miRNAに対するマイクロアレイによって組織特異的に発現するmiRNAを絞り込み、miR140が軟骨特異的に発現することを見出した。さらに、この発現パターンが転写因子Sox9と一致することに注目、Sox9のコンディショナルノックアウトマウスにおいてはmiR-140の発現が見られないことを証明し、miR-140がSox9の下流遺伝子である可能性を見出した。また、Sox9によってmiR-140の発現が上昇することを見出し、miR-140近傍にSox9によって活性化されるエンハンサーを同定した。 また、miR-140 KO、Tgマウスについて、変形性膝関節症モデルマウスを作製、術後2週、4週でサフラニンO染色等の軟骨基質染色やII型コラーゲン等の免疫染色を行い、変形性関節症における軟骨破壊を評価した。結果、miR-140が軟骨の恒常性に必須であり、関節炎の抑制に重要であることを示した。 上記マウスサンプルやヒト変形性関節症患者由来の軟骨細胞を用いての病理学的解析によってmiR-140がMMPsやAdamts-5の発現抑制によって、軟骨基質維持し、変形性関節症の進行を抑制することを見出した。さらに、Adamts-5の3'UTRにmiR-140の認識部位を決定し、miR-140によって直接Adamts-5の発現が抑制されることを示した。これらの成果は、miRNAをターゲットとした新しい関節炎治療の可能性を示唆しており、miR-140を介した分子ネットワークを更に解析することによって、軟骨の再生・維持機構の詳細が明らかになることが期待できる。また、これらのツールを利用して、内軟骨性骨化におけるmiR-140の役割についても、解析が進んでいる。
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