研究概要 |
平成20年度までの研究結果に基づき、本年度はOAにおける滑膜病変の解明を目指して研究を展開した。 (1)32例の末期OA膝関節から滑膜を採取してcDNAマイクロアレイによる解析を行い、それぞれの検体について遺伝子発現プロファイルを解析した。次にこのデータを用いて32例の症例間の個体差に着目して種々の遺伝子問の発現の相関を検討した。この結果、前年度までの研究結果によって明らかにされたMMP1, MMP3, VCAM1の間の発現の相関が確認され、この手法によって滑膜における遺伝子発現の関連が解明できる可能が示された。次項で述べるように我々は自身の解析結果からOAにおける軟骨変性には滑膜で産生されて関節液中に放出されるMMP-1,2,3が関与する可能性を見出した。このため現在はアレイのデータを用いて、滑膜においてこれらのMMPと発現が相関する因子を探索しており、そのいくつかについては培養細胞およびマウスとラットを用いた実験によってその生理的な意義を明らかにする実験を進めている。 (2)関節液の解析では軟骨の変性産物の濃度と各種因子の相関に着目して解析を進めた。II型コラーゲンの変性の指標であるneoepitope (CIINE)の濃度をELISAで測定し、一方アグリカンの変性はaggrecan core proteinの濃度(ACP)、ケラタン硫酸の濃度(KS)、硫酸化グルコサミノグリカンの濃度(sGAG)をそれぞれ測定して評価した。さらに関節液中に存在する、関節軟骨の変性を促すまたは抑制する可能性のある因子57個についてその濃度をLuminexとELISAによって計測し、この中で(1)生理的に意味のある濃度で存在すること、(2)軟骨の変性産物の濃度と正または負に相関すること、という2つの条件によって軟骨変性に実際に関連する因子を見出そうとした。現在までに関節液中のMMP-1,2,3の濃度が軟骨基質の変性産物の濃度と有意に関係するという結果を得ており、さらに解析を進めている。
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