神経細胞間の回路網構築の過程に対して、各種の神経栄養因子や細胞増殖因子がどのように影響を与えるのか、時相・部位特異的に作用させることに依って損傷後の組織修復に寄与するのか(ある部位では作用を抑え、別の部位では作用を強化することで正常な回復を促進するか)、麻酔や神経ブロックに使用される薬は正常および異常な発生・再生過程をどのように修飾するのか、最新の細胞培養システムを用いた基礎実験、行動実験、および臨床データをもとに明らかにする計画を進めている。初年度の研究では前年からの継続研究である、線維芽細胞増殖因子の局所筋肉内注入による血管新生作用の臨床データを集積することにより、その応用可能性を考察した.また、神経に正確に薬剤を到達させる技術を確立するために、CTスキャンガイドの神経ブロック法を臨床例をもとに開発した.この方法は交感神経節に薬剤や物理的エネルギーを到達させるための有効な手段になると考えている.神経の疼痛伝達を修飾する薬剤を同定するための研究も薬理学的手法を用いて実施した.その結果、セロトニンの末梢における作用が重要であることが示唆され、疼痛伝導の修飾に用いうる薬剤の新たな可能性を解明した.一方、全く別のアプローチとして重粒子線を神経に放射することにより神経線維の伸展を調節できることを発見した.この技術も新規の神経再生修飾技術に応用可能と考えている.現在、臨床で問題視されている、血糖コントロ一ルと組織再生に関する解析を進めており、神経の正常な再生に最適な組織液環境を同定中である.
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