研究概要 |
1, 動物実験 (1) 気圧検出メカニズムの解明に関する研究 麻酔下のラットの前庭神経核から細胞外記録を行い,低気圧曝露(-20hPa/10分)に対する反応性を調べた.これまでの結果と同様に,数例のユニットにおいて低気圧曝露中に一過性の反応を観察することが出来た.気圧センサーが内耳前庭に存在するという仮説がさらに支持される. (2) 気象要素の変動に対する交感神経の反応性に関する研究 自由行動下のラットの腰部交感神経幹に電極を留置し,神経活動の連続記録を行った.慢性神経損傷(一側の坐骨神経を軽く絞扼)後に長期間(1週間〜1ヶ月)の連続記録に成功した(5例).慢性痛初期(1週間以内)には交感神経活動が一過性に増加することが観察された. 2, 臨床実験 (1) 慢性痛患者に人工気象曝露を行い、「天気痛」が再現できるかについての研究 愛知医大痛みセンターに通院する天気変化に敏感な8名の慢性痛患者を十分な同意を得て被験者とした.低圧低温環境シミュレーターにより人工的気象要素変化に暴露し,患部の疼痛スコアの変化を観察した.全例で,低気圧曝露(-40hPa/30分)によりPain Visionで測定した疼痛スコアが一過性増加し,天気悪化時にみられる随伴症状(眩暈,耳鳴り等)も再現した.また,一部の被験者においては心電図の連続記録を行い,R-R間隔の変動解析した.結果として,低気圧曝露中には心臓交感神経系が一過性に賦活することが分かった.
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