1.前立腺癌患者血清の解析では、前年度Apolipoprotein C-1を同定したが、癌の進行と伴に発現が増強する血清中のマーカーとして期待できることを論文として発表した。 2.前立腺癌手術標本の解析では、癌組織、前立腺肥大症ならびに正常前立腺組織からRNAを抽出しマイクロアレイ解析を行った。それらについて遺伝子発現の機能的ネットワークやgene ontologyの手法を用いて解析した。正常組織と比較して5倍以上の発現増強あるいは5分の1以下の発現減弱を呈した遺伝子は、前立腺癌では141、前立腺肥大症では402であった。これらの遺伝子のパターンから、前者では5つ、後者では8つの機能的ネットワークが存在することを明らかとし論文として発表した。 3.動物モデルを用いた実験では、進行前立腺癌に対する治療法の確立を目指して、センダイウイルスベクター活性化樹状細胞療法の有用性について解析した。この樹状細胞療法は実験腫瘍モデルの肺転移を高率に抑制し、その抑制の機序としてNK細胞活性が重要でありまたCD4陽性細胞も関与していることを明らかとした。これらの成果を論文として発表した。 4.ヒトにおける樹状細胞療法では、各症例から得られる樹状細胞数が少ないことが問題点となっている。前駆細胞をin vitroにおいて増殖させ、その後成熟させた樹状細胞でも、肺転移を抑制することが可能な手法を、動物モデルにおいて確立した。これによって、今後の臨床応用への可能性を示すことができ論文として発表した。 5.以上の成果から得られた知見を、実地医療の中に位置付けるために、日本人データによって作成した前立腺癌診断nomogramを海外のものと比較してその特徴を検証し、また血中テストステロン値と前立腺癌発生や進展との関適についてもまとめ論文として報告した。
|