1.前立腺癌患者血清の解析では、222症例(骨転移58例、T2 57例、T3 55例、対照52例)について骨代謝マーカーであるcarboxy-terminal pyridinoline cross-linked telopeptide parts of type-I collagen(1CTP)とtartrate-resistant acid phosphatase type 5 bを測定した。多変量解析により、1CTPは骨転移の診断や予後の予測に最も有用であることを示し、論文として報告した。さらに、201症例(骨転移51例、T2 55例、T3 46例、対照49例)について破骨細胞形成関連マーカーであるosteoprotegerin(OPG)とreceptor activator of nuclear factor κB ligand(RANKL)を測定した。その結果RANKLよりもOPGの方が骨転移の診断や予後の予測に有用であることを示し、これについても論文として報告した。 2.動物モデルを用いた実験では、進行前立腺癌に対する治療法の確立を目指して、センダイウイルスベクター活性化樹状細胞療法の有用性について解析した。前年度はマウス実験モデルについて論文発表したが、本年度はラット前立腺癌モデルについてその有用性を示すとともに、その転移抑糊の機序がretinoic acid-inducible gene Iを介したものでないことを示し、論文として報告した。 3.遺伝子発現を制御する小分子としてマイクロRNA(miRNA)が注目されている。ヒト癌において発現低下が報告されているmiR-145についてヒト前立腺癌細胞株であるPC3とDU145を用いて解析した。miR-145はこれらの癌細胞の増殖、遊走、浸潤を抑制した。またmicroarray解析による遺伝子発現解析を行い、miR-145がアクチン結合タンパクの1つであるfascin homolog 1(FSCN1)を直接制御することによりその効果を示していることを明らかとし、論文として報告した。
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