1.前立腺癌組織における microarray 解析において前立腺肥大症と比較して発現の亢進している遺伝子を同定し2009年に報告したが、その解析を進めた。その中でFOXA1遺伝子に着目し機能解析を行った。FOXA1はアンドロゲン受容体と結合し、前立腺特異的遺伝子の転写を調整しているが、前立腺癌細胞ならびに臨床検体について解析した。その結果、FOXA1は前立腺癌細胞株において増殖、浸潤、遊走能に関与していることを示した。論文としてまとめ投稿中であるが、病理学的診断マーカー、および治療標的分子の候補となる可能性を示唆する結果が得られた。 2.前年度に引き続きマイクロRNA(miRNA)について解析を進めた。miR-1とmiR-133aについて前立腺癌では有意に発現が低下していた。PC3およびDU145前立腺癌細胞において、これらのmiRNAを発現させると増殖や運動性、浸潤能などが有意に抑制されることを示した。遺伝子解析を進めた結果、purine nucleoside phosphorylase(PNP)がこれらのmiRNAによって直接制御されることが明らかとなった。また、前立腺癌臨床検体においてPNPが発現していることを示し、前立腺癌における標的遺伝子の候補となる可能性を示した。これらの成果を論文として報告した。 3.上記研究で得られた成果を臨床に還元するために、前立腺癌の診断や治療に関する解析も進めた。手術療法を行った限局性前立腺癌の病理学的評価を行い、手術標本における病理所見の悪化を推測するノモグラムを開発し、その有用性について明らかとしたので論文として報告した。また、手術患者の腫瘍学的評価について解析し論文として報告した。骨転移のある未治療進行性前立腺癌に対して内分泌療法を行い、それに併用したビスフォスフォネート製剤の効果について解析し論文として報告した。
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