研究課題
異物である胎児を許容するために、母体は胎児許容機構を有し妊娠が維持されているが、この機構が破綻すると流産、早産、妊娠高血圧症候群が発症するとも考えられるが、詳細は不明である。本研究では、まず妊娠維持機構を明らかにし、次に妊娠合併症における母体免疫系の変化を明らかにした。本年度に得られた結果は以下の如くである。[正常妊娠における妊娠維持機構]これまで制御性T細胞(Treg)が妊娠維持に重要な役割を果たすことを報告してきたが、今回マウスの系でアロ妊娠の際、子宮と領域リンパ節にはアロ抗原特異的Tregが増加しており、しかもKi67陽性であることを証明し、妊娠子宮では父親由来抗原に対する免疫寛容を誘導していることを初めて証明した(投稿準備中)。また制御性NK細胞が存在することも明らかにし(J.Reprod.Immunol 2008)、これらNK細胞はpoly I:C、LPS、R837でTLR3、TLR4、TLR7を刺激してもNK活性が増強しないこと、IFN-γやTNF-αなどのThlサイトカイン産生が増強せず妊娠維持の重要な役割を果たすことを証明した(Fertil Steril 2008)。[異常妊娠における免疫機構]ヒト流産例の着床部ではgranulysin(GL)陽性NK細胞が増加しており、NK細胞が絨毛外トロホブラスト(EVT)と接触しパーフォリンを介してEVTへGLが移行し、最終的に核に移行したGLによりアポトーシスで生じさせることを証明した(Am J Pathol 2008)。本研究はヒトにおいて母体免疫細胞が胎児組織に攻撃し流産の原因となることを示した初めての報告である。また早産例の羊水中ではThl7細胞から産生されるIL-17が増加し、IL-17はTNFαと相乗的に作用し羊膜間質細胞からのIL-8産生を高めること、この作用にはMAP kinaseが重要であることを証明した(第23回日本生殖免疫学会賞受賞)。その他Treg減少が着床不全や妊娠高血圧症候群の要因となることを見い出した。
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