本研究は我々がこれまでに正常子宮内膜上皮細胞より作製した不死化~癌化細胞を用いて内膜癌化の経路を解明し、新たな分子標的を探索することを目的としている。具体的にはすでに不死化細胞を癌化させることが明らかとなっているK-ras変異導入による癌化の経路を明らかにすることを第一の目的としたが、当該年度には子宮内膜癌化に関わるK-ras遺伝子の下流のpathwayとしてNF-KBの活性化が重要であることを見いだした。具体的にはK-ras変異導入細胞ではNF-kBの転写活性化能が亢進していること、NF-kBのDNA結合能が上昇していること、NF-kB活性を阻害するIkBを強制発現すると浸潤能の低下、マウス腫瘍サイズの著明な減少など癌化のphenotypeの減弱が確認された。現在さらにNF-kB活性亢進の機序としてIKK活性の測定などを行っている。さらにK-ras遺伝子変異のある患者に対するNF-kB阻害剤の応用を将来的には目指し、in vitroでK-ras遺伝子変異のある細胞とない細胞でのNF-kB阻害剤の効果を比較検討している。
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