研究概要 |
本研究では,磁性体を用いて腹腔子宮内膜症モデルマウスを作成し,その異所性内膜病変の振る舞いを非侵襲的・リアルタイムに定量解析することが可能なシステムを構築することを目的とする.本年度は,初代培養内膜細胞ではなく内膜腺上皮細胞株Ishikawaを用いて,実験システムの基盤データを収集した.まず,Ishikawa細胞を,以前我々が用いたレンチウイルス(Masuda,et al.,PNAS,2007)により,発光蛋白と蛍光蛋白の両者で標識した.IshikawaはEP-CAMを発現しているので,抗EP-CAM抗体と磁気ビーズを用いて標識Ishikawa細胞を分取し,重度免疫不全マウスの腹腔内へ移植した,同時に腹壁皮下に直径5mmの磁石を埋め込み,約4週間後に既報(Masuda,et al.,PNAS,2007)と同様にbioluminescence imagingを行ったところ,埋め込んだ磁石の位置にIshikawaが集積していた.しかし,EP-CAMで選別していないIshikawaでも磁石埋め込み位置に集積傾向がみられた.これは,磁石の皮下埋め込み部位で,局所の炎症反応が起こり,さまざまなケモカインやサイトカインが産生され,それにより移植したIshikawaが遊送し集積していると考えられたため,埋め込みでなく,皮膚の外に貼付しただけにしたところ,24時間の磁石の留置で十分集積することが判明した.一方,今後の初代培養内膜細胞の使用に向けて,発光ならびに蛍光蛋白に加えて選別マーカーの3つの蛋白を同時に発現するレンチウイルスの作製に着手し,現在ベクターの構築を完了した.本年度は,次年度に向けての基盤データの収集と実験条件・技術の確立をほぼ終了した.
|