研究概要 |
遺伝性難聴は出生2000人に1人の割合で発生する疾患であるが, 難聴を根治する治療法はいまだ確立されていない. 日本人の遺伝性難聴の主な原因は, 内耳に発現するpendrin(SLC2644)が変異によりミスフォールディングし, 機能低下するためであると考えられている. 我々はこれまで, pendrinと相同性が高く, 内耳外有毛細胞に発現する膜タンパク質prestin(SLC26A5)を研究してきた. そして, 変異によりprestinが細胞内でミスフォールディングし機能を失う場合, 分子シャペロンとして働く物質サリチル酸を細胞に投与すると, 変異prestinがリフォールディングし, その結果機能が回復することを発見した. その結果をもとに本研究では, 変異prestin同様, ミスフォールディングした変異pendrinをリフォールディングさせ, それらの機能を回復させる手法を確立し, 遺伝性難聴の革新的治療法を開発することを目指すことを目的としている. 平成20年度は下記の研究を行った. [1] 日本人で報告されている10種類の変異pendrinの遺伝子を作製した. [2] 10種類の変異pcndrinを細胞に発現させて細胞内での局在を免疫染色法により解析し, wild-typeと同様に膜に移行する変異体と細胞内に留まる変異体があることを明らかにした. [3] 放射性同位元素125^Iを用いてpendrinのイオントランスポート活性を測定する系を確立した. [4] サリチル酸は細胞内に留まる変異体の一部を細胞膜に移行させ活性も回復させる作用があることを明らかにした.
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