研究課題
研究は大きく、遺伝子改変マウスを用いた実験と、サプリメント等食餌療法の効果を調べる実験に分かれた。解析は1)ABRを用いた機能解析、2)光顕・免疫染色による組織観察、3)DNA microarray、Quantitative PCR法による遺伝子解析を行った。まずビタミンC合成のできないSMP30/GNL欠失マウスを用い、ビタミンCの欠乏による老人性難聴の影響を調べた。ビタミンCを与えないマウスでは蝸牛内、肝臓、血漿中のビタミンCが著明に低下し、ビタミンC投与群や野生型と比べて有意に老人性難聴が悪化し、ラセン神経節細胞も減少していた。一方ビタミンCを投与しても老人性難聴の予防はできなかった。次にミトコンドリア内のCatalase過剰発現マウスにおいて加齢によるABR閾値上昇がC57BL6マウスに比べて抑えられることを見出した。さらに17種の活性酸素除去効果のあるサプリのC57BL6マウスにおける老人性難聴進行抑制効果を調べ、そのうちαリポ酸、CoQ10、NACの3種類に効果のあることを見出した。これら老人性難聴の進行が抑制されたマウスの蝸牛ではBakの発現が有意に減少していた。Bax欠失マウスでは加齢によるABR閾値上昇がC57BL6マウスと差がなく、Bak欠失マウスでは加齢によるABR閾値上昇がC57BL6マウスに比べて抑えられることを見出した。これらの結果から、蝸牛内に生じる活性酸素による慢性的障害からBakを介したアポトーシスが蝸牛内の細胞に生じ、老人性難聴が生じることが示唆された。最後に高脂肪食により老人性難聴が悪化するか、またそれが水素水やスタチンにより予防できるかに関して実験を開始した。
すべて 2009
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