研究概要 |
スギ花粉症のいかなる患者に対して舌下免疫療法は効果があるかを調べる最終目的のために、まずスギ花粉症患者の全ゲノム解析を行った。その結果からORMDL3(Orosomucoid1-like 3,遺伝子多型部位rs7216389,P=0.0012,危険塩基T)、DAF(Decay accelerating factor:CD55, rs10746463,P=0.00033,危険塩基A)、Intelectin-1(rs2274907,P=0.009,危険塩基A)の遺伝子がスギ花粉症に関連していることを見出した。ORMDL3:TT型はリスクアレルホモでスギ花粉症が有意に多く、かつORMDL3発現が亢進していた。さらに鼻粘膜上皮で多くのORMDL3の発現を認めた。アトピー型喘息での責任SNPでもあり、アレルギー性鼻炎と有意な高い相関を示した。rs7216389のリスクアレルTT型の患者ではORMDL3発現が有意に亢進していた。ORMDL3発現は、鼻粘膜上皮、線維芽細胞で認め、それぞれpoly-IC刺激で発現が亢進した。アレル別に末梢血からCD4陽性細胞を分離し、poly-IC刺激を行うとリスクアレルTTでIL-10、IL-17の産生が有意に高かった。さらにスフィンゴシン1リン酸もリスクアレルTTで高値であった。 DAFは、補体C3がC3a活性型になるのを抑制する遺伝子であり、AA型ではDAFの発現が低く、有意に高いスギ特異的IgE、総IgEであった。 スギ花粉飛散時期では、スギ花粉症患者末梢血においてDAF発現が有意に低下し、スギ花粉症患者鼻粘膜でのIntelectin-1は、有意な発現亢進を認めた。一方スギ特異的IgE陽性ながら未発症者では、鼻粘膜でのIntelectin-1発現は低値であった。
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