われわれは以下のマウスを実験系に用いて内耳恒常性維持と受傷性について解析した。 1)OGGは活性酸素の除去を行う遺伝子であるが、その除去が行えないマウス(OGG KOマウス)において加齢変化が発生しやすいことが判明した(現在論文準備中)。 2)TBLI遺伝子はショウジョウバエ眼において感覚器恒常性維持に重要であることがわかっており、TBL1遺伝子部分欠損とTBL1遺伝子全長の両者を有するマウスを作成して、ドミナントネガティブ効果をみる予定である。このマウスにおいて比較的強大音響を負荷した後にABRによる聴力測定をする予定である。 3)オートファジーは細胞死、発生や加齢変化などに関与する。われわれは、オートファジーのサブタイプであるautophagy(atg)7を内耳特異的に欠損させることにより、感覚細胞である有毛細胞のせん毛が欠損し、ABR上で高度難聴を示すことを発見した。オートファジーが細胞内のカプセル化に関与する因子であるので、せん毛を作成する因子を運搬できないなどの問題が生じている可能性がある。現在マウスを増殖させて検討を加える予定である。内耳培養細胞も使用して解析しており、包括的にデータを報告する予定である(2010年アメリカ耳鼻咽喉科学会AAOポスター賞を受賞した)。 以上の結果から、活性酸素除去能、オートファジーに代表される維持機構の状態が内耳恒常性維持に関与することがわかった。また、TBL1遺伝子の機構は不明な点も多いが、分担者である津田博士と継続してショウジョウバエからマウスまで解析していく予定である。
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