研究課題
【目的】リンパ節転移の有無は、メラノーマの重要な予後因子のひとつである。近年、リンパ節転移のメカニズムの解析が癌組織におけるリンパ管新生という観点から進められてきている。本研究では、メラノーマのリンパ節転移成立に及ぼすメラノーマ細胞(MM)とリンパ管内皮細胞(LEC)の相互作用の役割について検討した。特に、LECが産生する液性因子がMMの遊走能にどのような影響を及ぼすのかについて調べた。【方法】MM5種類およびヒト新生児真皮由来リンパ管内皮細胞(LEC)を用いた。LECは細胞表面のCD31とpodoplaninがともに陽性であることを指標にした細胞だが、さらにこの細胞がLECであることを確認するために、LECに特異的なマーカーの発現をRT-PCR法と免疫蛍光抗体法で調べた。次に、LECを牛胎仔血清を含まない培地で培養し24時間後に回収し、LEC培養上清(LEC-CM)とした。同様にして、MMの培養上清(MM-CM)も作成した。細胞増殖能は、WST-8を用いて評価した。DNA合成能は、チミジンアナログのBrdUを取り込ませ、抗BrdU抗体を用いたELISAで定量した。アポトーシスは、アポトーシス実行因子であるカスペース3/7活性をホモジニアスフォーマットを採用した発光検出法により測定した。細胞遊走能はトランスウェルチャンバーを用いて無血清下、6時間のアッセイで評価した。【結果】使用するLECに、血管内皮細胞の混入がないことを確認した。MMはEC-CMでの培養により,細胞が増殖する傾向はみられなかったが、ケモタキシスは有意に誘導された。LECは、MM-CMでの培養により、細胞が増殖する傾向はみられたが、DNA合成能の増加あるいはアポトーシスの抑制はみられなかった。ケモタキシスの増加はみられなかった。【考察】以上の結果からリンパ管内皮細胞が産生する産生する液性因子がメラノーマの遊走能を刺激している可能性が示唆された。今後、この液性因子の同定をすすめていく予定である。
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