平成20年度は、まず、細胞培養を行う実験施設の整備から開始した。組織検体の採取、細胞の採取保存を中心に研究を遂行した。組織検体としては強い炎症後色素沈着を呈する潰瘍性病変の組織4症例分を採取、保存した。報告時現在、組織学的検討を目的とする免疫染色方法の最適化を行っている。具体的な病態生理についての検討は次年度以降に計画している。他方、皮膚炎症後色素沈着および瘢痕形成に深くかかわる細胞として線維芽細胞および表皮角化細胞の培養、検体保存を行った。本研究では、特にこれらの細胞の部位特異性について明らかにしたいと考えているため、35症例140部位から線維芽細胞を初代培養した。特に同一症例で多部位から組織採取を行いえた14症例74部位については、第2-3継代培養細胞の32日間にわたる増殖曲線を調べた。結果として、皮膚に限っていえば皮膚浅層と深層の線維芽細胞とでは全く異なった増殖能を持つ細胞群から構成されていることを示唆する知見が得られている。また同実験と並行して、各細胞群における培養上清を採取し凍結保存しており、来年度以降に各細胞群が培養液中に分泌するサイトカイン量(特に創傷治癒、瘢痕形成に重要と考えられるもの)を測定し、おのおのの細胞群の特徴を明らかにしていく予定である。表皮角化細胞の培養については、過去の報告において、研究代表者が使用していた培養液が販売中止となっていたため、現在複数メーカーの培養液を用いて初代培養を行い、培養方法の最適化を試みている状況である
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