研究課題
本年度はモエシンノックアウトマウスを使用した実験系においてマウス気管内にブレオマイシンを投与し、生存率、肺線維化などの特徴を、Trichrome染色等を用いて同様の処置を施した野生型マウスと比較した。その結果、モエシンノックアウトマウスにおいて著明な線維化の継続と、高い死亡率を示した。さらにこのマウスではラディキシン、エズリンなど他のERM蛋白の代償的な発現を肺胞上皮から気管支上皮壁に認めたが、ウェスタンブロットによる定量的検討ではこれらの代償発現は有意差を認めず部分的な代償に過ぎないことを認めた。これらの炎症機転にはTNFおよびMIP-2が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。以上よリモエシンが肺上皮の損傷および修復に大きく関与している可能性が示された。さらにATPに関する実験ではマウスに高容量換気による人工呼吸関連肺損傷モデルを作成し検討を加えたが、高容量換気群では、有意に肺間質重量比が増大し、血中投与したヒトアルブミンの肺胞内濃度が上昇すると共に、気管支肺胞洗浄液中の細胞外ATP濃度が上昇することが明らかとなった。また同程度の気管内ATP投与により、肺胞における透過性の亢進が認められた。以上の結果より細胞外ATPは細胞破壊もしくは特定の細胞から能動的に分泌されプリナージック受容体を介してこれらの作用を発現しているのではないかと想定された。これらの仮定に基づいて現在受容体分析を行っている。
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