本年度は、唾液腺BDNF過剰発現マウスの作製を行うと同時に、C57BL/6を用いてストレス負荷時に生じるストレス性変化がBDNFの投与で予防されるかどうかについて検討した。 1)唾液腺BDNF発現Tgマウスの作製 C57BL/6マウスメス10匹より卵子を採取し、約400個の受精卵にマイクロインジェクションを行い出産用メスに戻す。この時、使用するDNAはマウスBDNF遺伝子に唾液腺アミラーゼのプロモーターを結合したものを用いることにより、唾液腺に特異的にBDNFを発現するTgマウスを作製する。マウスBDNF遺伝子はPCRで作製し、発現ベクターに導入後、BDNF蛋白の産生を確認後遺伝子導入に用いた。また、アミラーゼのプロモーターは斉藤一郎教授(分担者)より供与を受け、導入遺伝子作製の一連の過程は、既に本プロモーターを用いてTgマウスの作製を行っている共同分担者斉藤教授との共同研究で進めた。現在、遺伝子導入が確認され順調に繁殖中である。 2)血中BDNFのストレス抑制効果についての予備的検討 C57BL/6に水深拘束ストレス負荷で生じるストレス性変化の一つである胃潰瘍が、BDNF投与で抑制される傾向が認められた。その効果は老齢マウスで顕著であった。さらに現在そのメカニズムについて分子病理学的手法を用いて解析中である。
|