本年度は、本研究で作出したTgマウスの解析を主として行った。本申請で作出したマウスは、BDNFを唾液腺に特異的に発現させるため、唾液腺に特異性の高いPSP(parotid secretory protein)をプロモーターとして用いるという特徴がある。マウスには元来唾液腺にBDNFは発現しておらず血中のBDNFも検出限界以下である。本マウスの特徴は唾液腺にBDNFが発現するとともに、血中にも約8倍のBDNF量が増加する点である。申請らの研究で、唾液腺において産生されたBDNFは血中に移行することをラットで示しており、予想通り唾液腺を由来とするBDNFが血中に移行するマウスを作成できた。このマウスは、9Wまでは肉眼的・組織学的に病的変化は認めない。血液生化学一般検査でも異常は認められなかった。本マウスを用いて、水深拘束ストレスを負荷しストレス性病変に対してコントロールマウスと比較したところ、明らかにストレスホルモン・肝障害・胃粘膜出血が軽減される傾向が認められた。すなわち、唾液腺由来BDNFはストレスに対して軽減作用があることが明らかになった。このメカニズムにBDNFレセプターのTrkBおよびp75の関与が考えられることから、各臓器においてこれらレセプターを介したストレス軽減メカニズムについて検討中である。
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