我々は、細菌の産生するγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)が破骨細胞分化を誘導することを見出した。GGTは歯垢を形成する細菌の多くが産生しており、歯周炎における病態因子として作用する可能性がある。我々は、これまでの研究から、GGTはサイトカインの様に標的細胞の細胞膜分子と結合して、破骨細胞分化を誘導すると考え、ある細胞膜分子群を候補とした作業仮説を立てた。これを実証するため、これらの膜蛋白分子を欠損するマウスを入手し、それぞれのマウス骨髄から破骨細胞前駆細胞を調製してGGTで刺激した。その結果、候補分子群のひとつの欠損マウスから調整した破骨細胞前駆細胞では、GGTによる破骨細胞誘導が低下した。このことから、この分子がGGTによる破骨細胞形成に関与していることが示唆された。現在、このマウスの歯肉溝に直接GGTを投与した顎骨の組織標本を作製中であり、近々in vivoにおける結果が得られるものと期待している。 破骨細胞前駆細胞として用いられる株細胞、RAW264.7細胞でもGGTによる破骨細胞形成が生じることを確認した。そこで、同細胞を用い、GGTによる破骨細胞分化の情報伝達経路について解析した。その結果、破骨細胞の分化に関与する重要分子、すなわちERK、JNK、p38などのリン酸化が確認され、IkBaのリン酸化も等しく確認された。これらのことから、GGTは破骨細胞分化因子RANKLと同じ情報伝達経路を活性化していることが明らかになった。これらの分子は今回の受容体候補分子の下流に存在することが知られている。一方、P.gingivalisのゲノム情報からのGGT遺伝子の特定については、本年度内に成果をうることができなかった。今後さらに検討を続ける予定である。
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