我々は細菌の生命維持に重要なグルタミル代謝酵素のひとつであるγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)が破骨細胞誘導活性因子であることを見出した。このことは、細菌GGTが歯周炎における歯槽骨破壊の病態因子となる可能性を示唆している。昨年度までの研究から、細菌GGTはサイトカイン様に破骨細胞前駆細胞の細胞膜分子を刺激して破骨細胞分化を誘導していることが示されている。当該年度はさらに研究を進め、GGTの破骨細胞誘導を仲介する細胞膜上の候補分子の特定に成功した。この分子の欠損マウスから調整した破骨細胞前駆細胞は、GGTで刺激しても破骨細胞形成が起こらない。HEK293細胞にこの受容体分子の遺伝子を導入し強制発現させ、蛍光化したGGTを反応させたところ細胞表面の蛍光反応が確認された。一方、未導入のHEK293細胞では蛍光反応はまったく観察されなかった。さらに、この細胞ではNFκBのルシフェラーゼ反応が観察された。すでにGGTで刺激されたRAW264.7細胞では、破骨細胞分化のシグナル伝達経路におけるERK、JNK、p38などのリン酸化に加え、IκBのリン酸化も等しく確認されている。これらの反応は、この受容体分子の下流に存在すること、RAW264.7細胞もこの受容体分子を発現していることなどから、この分子がGGTの破骨細胞分化誘導の標的あると考えられた。そこで、一分子間相互作用などの実験を行った。しかしながら、この分子とGGTが直接接合する証拠はまだ得られていない。このことから、GGTとこの分子の間にはさらに仲介分子が存在するのかもしれない。最終年度は、この点に焦点を当てた解析を進める必要があると考えられた。
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