細菌の産生するγ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)に酵素活性非依存性の破骨細胞誘導活性を見出した。歯周炎の原因菌とされる種々の細菌の培養上清にはGGTが検出される。我々はGGTの受容体がTLR familyと仮定して、TLRsに共通する下流分子MyD88を欠損するマウスの骨髄細胞を用いた破骨細胞誘導実験を行い、GGTによる破骨細胞誘導にはMyD88分子の関与が必要であることを見出した。本年度は、受容体の特定を行う目的で、TLR2およびTLR4のそれぞれのノックアウトマウスの骨髄細胞を用いた破骨細胞実験を行った。その結果、TLR4の欠失マウスの骨髄細胞からは破骨細胞が誘導されなかった。またTLR4欠失マウスの歯肉溝に細菌GGTを注入してもやはり破骨細胞誘導はなかった。これらのことは、GGTがTLR4の新たなリガンドであることを示唆している。その一方で、TLR4はLPSの受容体であり、過去にもTLR4の新規リガンドとして示唆された分子が後にLPSの混入であることが判明した事例も多くある。そこで、LPSの混入がないか慎重に検査を行った結果、現時点ではGGT溶液中のLPS濃度は極めて低く、破骨細胞誘導に寄与する濃度ではないという結果を得た。以上のことから細菌に由来するGGTはTLR4を介した病態因子となることが示された。しかし、細菌によってはそのGGTが破骨細胞を誘導しないタイプもある(昨年度実績)。したがって、歯周炎の原因菌のどの菌が破骨細胞誘導活性をもつGGTを産生するのかという課題が残された。
|