研究課題
基盤研究(B)
転写因子NF-κBのオルタナティブ活性化機構は、主にNF-κB-inducing kinase(NIK)、IKKα、p100/p52とRelBによって構成される。この活性化機構は、NIKによってp100からプロセシングされたp52がRelBとヘテロダイマーを構成し、標的遺伝子の発現を調節する。これまでにNF-κBのp50およびp52サブユニット2重欠損マウスが破骨細胞の存在しない大理石骨病を呈することから、NF-κBが破骨細胞分化に必須であると考えられるが、その詳細な分子機構はよくわかっていない。我々は破骨細胞分化におけるNF-κBのオルタナティブ活性化機構の役割を解明するために、NIK遺伝子の不活型変異によってp100からp52へのプロセシングが起きないAlymphoplasia(aly/aly)マウスの骨を解析した。Aly/alyマウスは破骨細胞数の減少による大理石骨病を呈した。In vivoの結果と同様にaly/alyマウス由来の骨髄細胞は野生型マウス由来の骨髄細胞と比較してRANKL刺激による破骨細胞形成が抑制された。aly/alyマウス由来の細胞では野生型マウス由来の細胞と同様にRANKL刺激によるIκBαの分解やERKのリン酸化が起こるが、p100からp52への分解が抑制された。さらに破骨細胞分化のマスターレギュレーターであるNFATc1の発現も低下していた。そこで、NFATc1を遺伝子導入するとaly/alyマウス由来の骨髄細胞における破骨細胞形成の抑制は解除された。さらに構成的活性型IKKαおよびp52を遺伝子導入しても同様に破骨細胞形成の抑制は解除された。次にp100およびp52が存在しないNF-κB2欠損マウス由来の骨髄細胞を用いて、プロセシングの起きないp100(ΔGRR)を遺伝子導入すると破骨細胞形成が抑制されたが、p52を遺伝子導入すると破骨細胞形成の抑制が解除された。p100が存在せずにp52だけが存在するp100欠損マウスでは破骨細胞形成の亢進による骨粗鬆症を呈することから、p100とp52の発現バランスが破骨細胞形成に重要であると考えられる。一方、広範囲にわたる骨欠損は骨吸収を抑制しても骨欠損部位の骨を再生しなければ、骨としての機能を回復することができない。骨誘導タンパク質(Bone Morphogenetic Protein:BMP)はin vivoで骨形成を誘導するだけでなく、in vitroで間葉系幹細胞から骨芽細胞分化を誘導するが、炎症の場で産生される腫瘍壊死因子(Tumor Necrosis Factor:TNF)αはBMPによる骨形成と骨芽細胞分化を抑制する。しかし、TNFαがBMPの効果を抑制する分子機構はよくわかっていない。そこで、本研究ではTNFαによるBMPシグナルの抑制メカニズムを解明することを目的とした。まず、マウス骨芽細胞株MC3T3-E1細胞を用いて、TNFαがBMP2刺激による骨芽細胞分化とBMP2またはSmad1依存性の転写活性を著明に抑制することがわかった。TNFαはSmad1/5/8のリン酸化およびSmad1/4の複合体の形成と核移行に影響しなかった。NF-κBの主要なサブユニットであるp65欠損マウス由来の線維芽細胞にp65を遺伝子導入するとp65の発現量依存的にBMP2またはSmad1依存性の転写活性を抑制し、この抑制効果はNF-κBの抑制タンパク質であるドミナントネガティブ型のIκBαを発現させると解消された。TNFα刺激はSmad1とSmad4の会合を阻害しなかったが、Smadの標的遺伝子プロモーター領域のDNAへの結合を阻害した。また、NF-κBの選択的阻害剤Bay11-7082で前処理するとTNFαによるBMP誘導性骨芽細胞分化の抑制が解除された。これらの結果より、TNFαはBMP刺激によるSmadのDNAへの結合を阻害することで骨芽細胞分化を抑制すると考えられた。
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