研究課題
破骨細胞分化はRANKLと呼ばれるサイトカインによって分化誘導される。我々は、RANKLによる破骨細胞分化誘導過程の初期段階において、IRF-8と呼ばれる転写因子の発現レベルが低下することを見いだした。解析の結果、IRF-8は破骨細胞形成において抑制的な役割を担っていることが明らかになった。IRF-8欠損マウスでは破骨細胞分化に抑制がかからないため、破骨細胞分化が促進され、骨粗鬆症が発症した。また、TNF-alphaと呼ばれるサイトカインによっても、分化が促進された。さらに、以前我々が報告したLPSなどの微生物構成因子による破骨細胞分化抑制作用も減弱した。IRF-8による破骨細胞分化抑制のメカニズムを解析したところ、IRF-8は分化に必須のNFATc1と呼ばれる転写因子の発現とその機能を抑制することが明らかになった。このことは、生理的な骨改造および炎症性骨破壊においてIRF-8が抑制的な役割を担っていることを示唆する。これらの研究成果はNature Medicine誌(vol. 15, No. 9:p1066-1071, 2009)に掲載された。さらに我々は、リン酸カルシウムのひとつであり、骨の再生医療の材料として有望視されているオクタリンサンカルシウム(OCP)と呼ばれる物質が破骨細胞分化を誘導することを見いだした。解析の結果、OCPが細胞外のカルシウム濃度を変動させると、それが骨芽細胞に破骨細胞分化誘導因子であるRANKLの発現を促し、破骨細胞分化を誘導することを明らかにした。この過程においてもIRF-8の発現低下が関与すると推察される。以上の結果はOCPを用いた骨再生誘導において、破骨細胞の形成が深く関与することを示唆する。この成果はTissue Engineering Part A (VOl. 15, No. 12:p3991-4000, 2009)に掲載された。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
Tissue Eng Part A 15
ページ: 3991-4000
Nature Medicine 15
ページ: 1066-1071
Biochemical Journal 419
ページ: 159-166