代表者はTGF-βの癌で作用を理解するために、EMT(上皮間葉転換)に着目して研究を進めている。TGF-βがEMTを誘導するには、rasや増殖因子などのシグナルと協調する必要であることをSnailの発現を指標に明らかにした。この結果をNMuMG細胞に応用したところ、FGF-2により相乗的にEMTが強められた。その分子機構は、まず、TGF-βによりFGF受容体のアイソフォームスイッチが誘導され、上皮系のIIIb型から間葉系のIIIc型に変換する、IIIc型のリガンドであるFGF-2によりErkが活性化されTGF-β誘導性EMTを増強する。TGF-βによって誘導されたδEF1転写因子は活性化したErkの下でCtBP1との結合が強められることがわかった。一方FGF-2の非存在下に観察されるEMTはSMAやカルポニン陽性の筋線維芽細胞に分化することも見出し、SMAの発現にはδEF1転写因子が非常に重要であることも明らかにした。したがって、これまで48時間以内で観察されていたTGF-β誘導性EMTを、長期培養に移行させると、SMAやカルポニン陽性の筋線維芽細胞へ分化するEMyoT(epithelial-myofibroblastic transition)を起こす。その間にFGFRのアイソフォームスイッチがおこり、FGF-2が存在すると増強されたEMT(advanced EMT)にてactivated fibroblastic cellへと分化することを明らかとした。
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